honkoma Journal / 業務設計
SaaSをAIで置き換えるべきか?「買う・受託開発・内製」の判断基準
SaaSを使い続ける、受託開発でつくる、AIで内製する。3つの選択肢を、業務の範囲・失敗時の影響・12か月の総保有コストで比較し、小さな一工程から置き換えを試す判断基準を整理します。

毎月支払っているSaaSの中に、「使うのは一部の機能だけ」「自社の業務に合わせるため、結局スプレッドシートも併用している」というものはないでしょうか。
AIコーディングエージェントの登場で、社内専用の小さなツールをつくるコストは下がりました。これまでSaaSを契約するしかなかった業務でも、自社に必要な機能だけを内製する選択肢が現実的になっています。
一方で、すべてのSaaSを解約すればよいわけではありません。この記事では、SaaSを使い続ける、受託開発でつくる、AIを使って内製する、という3つの選択肢を経営者が見極める基準を整理します。
AIで「つくる」コストは下がった。でも全部は置き換えない
僕たちの会社で継続利用しているのは、Google Workspace、会計ソフト、Notion、ClaudeやCodexなど、業務の基盤になるサービスが中心です。それ以外の小さな業務は、自分たちで仕組みをつくるか、そもそもツールを使わないケースが増えました。

候補になるのは、名刺管理、見積書の作成、問い合わせ管理、メールマガジンやLPの作成などです。ただし「AIなら何でもつくれる」ことと、「会社として安全に運用できる」ことは別問題です。
SaaSを減らす目的は、解約件数を増やすことではありません。業務に合わない固定費と手作業を減らし、必要なところへ投資を移すことです。
SaaS・受託開発・AI内製のメリットとデメリット
3つの選択肢には、それぞれ向いている仕事があります。
迷ったら、外部責任・法令・高い可用性が必要な業務はSaaS、固有要件が複雑なら受託開発、狭く社内で閉じた反復業務ならAI内製、という順で考えます。
SaaSを使う
- メリット:導入が速い、保守や更新を任せられる、標準機能や連携先が多い
- デメリット:使わない機能にも費用がかかる、自社業務に完全には合わない、人数に応じて料金が増えやすい
受託開発でつくる
- メリット:自社の要件に合わせやすい、複雑なシステムも専門家へ任せられる
- デメリット:要件定義と初期費用が必要、変更のたびに調整が発生する、納品後の保守体制を決める必要がある
AIを使って内製する
- メリット:小さく素早く試せる、現場の変化に合わせて直しやすい、必要な機能へ絞れる
- デメリット:品質・セキュリティ・権限管理を自社で見る必要がある、担当者依存になりやすい、継続保守の責任が残る
この3つは二者択一ではありません。基盤はSaaS、固有業務は受託開発、周辺の小さな自動化はAI内製、という組み合わせが現実的です。

置き換えやすいのは「狭く、社内で閉じた」業務
AI内製と相性がよいのは、次の条件に当てはまる業務です。
- 使う人と目的が限定されている
- 入力と出力が明確である
- 人が最後に確認できる
- 外部サービスとの複雑な連携が少ない
- 止まっても事業全体へ致命的な影響がない
- 現行SaaSの機能をほとんど使っていない
反対に、決済、会計、勤怠の法令対応、社外とのメッセージ基盤、全社認証などは慎重に考える必要があります。外部連携、監査、可用性、サポートまで含めると、実績のあるSaaSを使う方が総コストを抑えられることがあります。

「画面がつくれた」だけで完成と判断しないことも重要です。認証、ログ、バックアップ、障害時の復旧、担当者が辞めた後の保守まで含めて、業務ツールとして成立します。
名刺管理を、AI中心の小さなワークフローへ変える
動画では、名刺を受け取った後の処理を例にしています。
- 名刺をスマートフォンで撮影する
- AIが氏名、会社名、連絡先を読み取る
- Notionなどのデータベースへ登録する
- お礼メールの下書きと候補日を作る
- 人が内容と宛先を確認して送信する

ここでの価値は、名刺管理アプリと同じ画面を再現することではありません。情報を登録した後に、お礼、日程調整、商談ステータスの更新までつながることです。
外部送信は誤送信の影響が大きいため、最初は必ず人の確認を入れます。安定してからも、重要顧客への連絡や例外処理は人が判断できる設計にしておく方が安全です。
経費精算や問い合わせ管理も「全部」ではなく分解する
経費精算なら、レシートから日付、金額、支払先を読み取るところはAIが得意です。一方で、承認、会計処理、税務ルール、証憑保管まで独自ツールへ置き換えると、確認すべき範囲が急に広がります。
問い合わせ管理も同じです。動画では、LINEとメールの問い合わせを一元管理していた月数万円程度のツールを、既存サービスとAIエージェントを組み合わせた構成へ置き換えた例を紹介しました。

置き換える単位は「SaaS丸ごと」ではなく、「その業務のどの工程か」で考えます。AIが得意な入力、分類、下書きを切り出し、正確性や外部責任が必要な工程は既存基盤と人へ残す。これが失敗しにくい進め方です。
月額料金ではなく、総保有コストで比べる
SaaSの月額をゼロにしても、内製ツールの修正に毎月何十時間もかかれば、コスト削減にはなりません。判断するときは、少なくとも次を比べます。
- 現在の年間利用料と利用人数
- 現場が補完作業に使っている時間
- 初期開発・移行・教育にかかる費用
- AIや外部APIの利用料
- 保守、監視、セキュリティ対応の工数
- 停止や誤処理が起きた場合の損失
- データを移し戻すためのコスト
目安にするのは「つくれるか」ではなく、「12か月運用しても得か」です。金額だけでなく、処理時間、エラー率、問い合わせ対応時間など、置き換え前後で比較できる指標を決めます。
SaaS棚卸しを進める5ステップ
明日から始めるなら、次の順番が分かりやすいです。
- 契約中のSaaS、費用、利用者、実際に使う機能を一覧にする
- 各業務を入力・処理・承認・外部送信・保管へ分解する
- 置き換えやすい一工程を選び、既存環境を壊さず試作品をつくる
- 2〜4週間、費用・時間・エラー・現場負担を並行比較する
- 保守担当、権限、ログ、復旧手順を決めてから本番へ切り替える
NotionやCodexなど、すでに使っている基盤を生かせる場合もあります。新しいツールを増やす前に、今あるデータと業務のつながりを確認してください。
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ご相談で費用をいただくことはありませんので、ぜひ一度お話を聞かせてください。どんな対策ができるか、コスト感の確認、相見積もりの検討だけでもOKです。

